工場用語辞典

引当 【よみ】 ひきあて 【英語】 allocation

将来発生する可能性が高い費用や損失に備えて、あらかじめ会計上で見積もりを立てて計上しておくことです。これは企業の損益や財務状況を正しく反映させるための重要な会計処理の一つです。

たとえば、ある会社が「商品を販売したが、一定数は返品される可能性がある」「従業員に退職金を支払う必要がある」「貸したお金が返ってこないかもしれない」といった将来の損失を予想できる場合、それに備えてあらかじめ「引当金」を計上しておきます。

これにより、利益が出たときにすべてを「儲け」として扱うのではなく、将来のリスクも考慮した健全な会計が実現できるのです。

引当金の種類と特徴:用途に応じた3つの代表例

引当金にはいくつか種類がありますが、代表的なものを3つ紹介します。

1. 貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)

これは、貸したお金が回収できなくなる(貸倒れ)リスクに備えて計上する引当金です。たとえば、ある企業が取引先に1,000万円を掛けで販売した場合、その会社が倒産する可能性があります。そのリスクに備え、売掛金に対して「貸倒引当金」を設定し、損失に備えるのです。

【例】

取引先A社に500万円の売掛金があるが、経営が不安定なため、5%(25万円)を貸倒引当金として計上。

2. 返品調整引当金(へんぴんちょうせいひきあてきん)

商品を販売した後、一定の割合で返品が発生する可能性がある場合に計上する引当金です。特に小売業や出版業界などでは、販売後の返品は珍しくありません。これをあらかじめ予測し、返品分の売上を減らすことで、実際の利益を正しく反映させます。

【例】

書店に1,000冊納品したが、過去の実績から10%が返品されると予想し、返品調整引当金として100冊分を見積もる。

3. 退職給付引当金(たいしょくきゅうふひきあてきん)

従業員が将来退職する際に支払う退職金や年金に備えるための引当金です。従業員が1年働くごとに退職金の支払い義務が少しずつ増えていくため、その分を毎年費用として計上していきます。これにより、退職時に突然大きな費用を計上することを防ぎます。

【例】

従業員50人のうち、今後5年以内に10人が退職する見込みがあるため、その分の退職金として300万円を引当金として積み立てる。

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引当金の意義と実務上のポイント:信頼される財務報告のために

引当金は、企業にとって経営の健全性や財務の信頼性を確保するために重要な仕組みです。特に、以下のような観点でその意義が強調されます。

1. 損益の平準化

引当金を計上することで、将来発生する支出や損失を事前に見積もって今期の費用に反映させることができ、特定の年度だけ損益が大きくぶれるのを防ぎます。これにより、企業の経営成績がより安定的に評価されます。

2. 投資家・取引先への信頼性向上

企業がリスクを正しく見積もって適切に引当金を計上していれば、「この会社は将来のリスクをちゃんと管理している」と評価され、投資家や取引先からの信頼が高まります。

3. 税務上の取り扱いに注意

一部の引当金は、**税務上の損金として認められるもの(例:貸倒引当金)**と、**損金算入できないもの(例:将来の訴訟リスクに備えた引当金)**があります。そのため、会計処理と税務処理のルールを正しく理解し、適切に対応する必要があります。