工場用語辞典
貼場工程 【よみ】 てんばこうてい 【英語】 Affixing process
主に製造業や組立工程において、複数の部品や素材を貼り合わせて1つの製品や部品に仕上げる工程を指します。特に、電子機器・自動車・家具・建材・包装など、多くの製品製造の現場で欠かせない工程です。
「貼る」と一口に言っても、両面テープ・接着剤・熱圧着・溶着・超音波など、その方法は多岐にわたります。素材の種類や製品の用途に応じて、最適な貼り付け方法が選ばれます。
貼場工程は、製品の見た目や機能性、耐久性、強度などに大きな影響を与えるため、非常に重要な工程の一つとされています。
貼場工程の目的と特徴
1. 部品の一体化と機能性の向上
貼場工程の最大の目的は、異なる部品を一体化し、製品としての完成度を高めることです。たとえば、電子機器では、基板に遮熱シートや絶縁フィルムを貼ることで、機能性や安全性を向上させます。また、自動車では吸音材や内装部品を貼り付けて、快適性や美観を高めます。
2. 製品の外観品質を左右する
貼場工程は製品の「見た目」に直結するため、精度の高い作業が求められます。シワ、ズレ、気泡などが発生すると、品質不良やクレームの原因になります。そのため、高い技能と注意力が必要です。
3. 自動化と手作業の使い分け
近年では、貼り付け工程の一部が自動化されており、ロボットアームや専用機械を使った量産も可能です。一方で、曲面や微細な部品への貼り付けなどは、今なお熟練作業者による手作業に頼る場面も多くあります。

貼場工程の具体例と現場での工夫
貼場工程はさまざまな業界で導入されています。以下に代表的な例を紹介します。
例1:スマートフォン製造における貼場
スマートフォンの製造工程では、ディスプレイとタッチパネルの貼り合わせ、防水用のシール材の貼付、液晶保護フィルムの装着など、多くの貼場作業があります。これらはミリ単位の精度が求められるため、自動化装置や高精度な位置決め技術が活用されています。
- 目的:防塵・防水・機能保護・見た目の美しさ
- 注意点:埃や気泡の混入、ズレ、接着ムラなどが品質に大きく影響
例2:自動車の内装部品組立
自動車のドアや天井などには、吸音材・防振材・装飾材(ファブリックやレザー)などが貼り付けられます。これらは、快適性と美観、さらには機能性(静音性・断熱性)を高めるために行われる重要な工程です。
- 目的:車内の快適性向上、内装の仕上がり品質向上
- 方法:専用型治具を用いた手作業や、圧着機を用いた自動貼り付け
例3:工業用テープの貼り付け作業(電気・電子分野)
精密機器の内部では、絶縁テープや両面テープ、耐熱テープなどが貼り付けられ、電子部品の固定や保護に使われます。小さく、薄く、壊れやすい部品が多いため、慎重な貼付作業が必要です。
- 目的:絶縁・固定・防塵・耐熱
- 工程の特徴:貼る位置の精度が求められるため、作業者の熟練度が品質を左右する
貼場工程における課題と今後の展望
1. 品質のばらつきと熟練作業者への依存
手作業による貼場工程は、どうしても作業者ごとの技量差が品質に影響を与えます。同じ製品でも、微妙な位置ズレや貼りムラが発生する可能性があるため、作業標準化や教育が重要です。
2. 自動化・ロボット化の推進
近年は、貼付位置を高精度で制御できるロボットや、画像認識による自動貼り付け装置が開発されており、高精度・高効率化が進んでいます。これにより、大量生産時の品質安定やコスト削減が期待されています。
3. 環境負荷の低減と新素材への対応
接着剤やテープには揮発性有機化合物(VOC)を含むものもあり、環境規制への対応が求められています。また、製品の軽量化や新素材への対応も、貼場技術の進化に直結しています。