エネルギー管理士とは?仕事内容・資格取得のメリットと難易度も

「エネルギー管理士」は、製造業で需要が高まっている資格の1つです。当記事では、エネルギー管理士の概要や活躍フィールドから、主な仕事内容、資格の取得メリットと取得方法、さらに向いている人の特徴まで徹底解説しています。
製造業で需要が高い資格の1つに「エネルギー管理士」があります。エネルギー管理士は施設や工場におけるエネルギー使用量の管理を担っていて、省エネやカーボンニュートラルに取り組む企業から評価されやすい資格です。
エネルギー管理士の資格に興味を持っていて、仕事内容や資格の取得方法が気になる方も多いでしょう。
今回はエネルギー管理士とはどのような資格かを紹介した上で、エネルギー管理士の仕事内容と取得するメリット、資格の取得方法・難易度などを解説します。
目次
エネルギー管理士とは?

エネルギー管理士とは、エネルギー管理士試験に合格、もしくはエネルギー管理研修を修了した方が取得できる国家資格です。エネルギー管理士の取得者は、エネルギー使用量が大きい施設においてエネルギー管理に従事する「エネルギー管理者」や「エネルギー管理員」として働くことができます。
そもそもエネルギー管理士は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」の改正に伴い、熱管理士・電気管理士の資格を統合する形で2006年に誕生しました。誕生の背景には、熱や電気など各種エネルギーの有効利用を促す目的があり、エネルギー管理士は工場や施設のエネルギー使用を管理・改善する役割を担います。
エネルギー管理士の活躍フィールド
エネルギー管理士は主に、年間のエネルギー使用量が原油換算で3,000kl以上で、下記の5業種に該当する第一種特定事業者の工場で活躍できます。
● 鉱業 ● 製造業 ● 電気供給業 ● ガス供給業 ● 熱供給業 |
(出典:資源エネルギー庁「工場・事業場の省エネ法規制」/https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/classification/)
第一種特定事業者の工場は、エネルギー使用量に応じて1~4人の「エネルギー管理者」の選任が義務付けられています。エネルギー管理者はエネルギー管理士の中から選ばれるため、資格保有者は高い需要があるでしょう。
また、5業種以外の第一種特定事業者の施設や、年間のエネルギー使用量が規定量の第二種特定事業者の施設では、「エネルギー管理員」の設置が義務付けられています。エネルギー管理員はエネルギー管理士かエネルギー管理講習の修了者から選ばれるため、これらの施設もエネルギー管理士が活躍できる職場です。
エネルギー管理士の仕事内容

エネルギー管理士の主要な仕事内容は、工場全体のエネルギー管理を行うことです。
その他にも設備の管理マニュアル作成や維持管理、報告書の作成などさまざまな業務を担当します。
以下ではエネルギー管理士の仕事内容を大きく4つに分けて、それぞれの業務を詳しく解説します。
エネルギー使用量の管理
エネルギー使用量の管理は、工場や施設で消費されているエネルギーの量を管理することです。設備の使用状況とエネルギー使用量を把握して、全体のエネルギー使用に問題が発生していないかを監視します。
エネルギー使用量の管理によってエネルギー使用の無駄を発見した場合は、改善策の提案と実施を行うことも重要な業務です。たとえばエネルギー効率がより良い機器の導入を計画したり、省エネにつながる設備の運用方法を検討したりします。
エネルギー管理標準の作成
エネルギー管理標準とは、エネルギーを使用する設備の適切な運用・管理を行うためのマニュアルです。省エネ法では、エネルギー管理標準の作成を事業者の義務と定めており、策定したエネルギー管理標準は判断基準として遵守することが求められています。
エネルギー管理標準は、運用・管理を行う組織や手法について定めた「マネジメント面」と、個々の設備の管理方法などを定めた「実務・個別機器面」で作ります。エネルギー管理標準は実情に合わせる必要があるため、管理手法や設備内容が新しくなった場合には更新も必要です。
エネルギー使用設備の維持・管理
エネルギー使用設備の維持・管理を行うことも、エネルギー管理士が従事する重要な業務の1つです。
エネルギー使用設備に故障や不具合が発生すると、エネルギー使用量に対して十分な成果を出せません。エネルギー管理士がエネルギー使用設備の保守点検などを行うことにより、設備の効率的な稼働を維持できるようになります。
なお、エネルギー使用設備の維持・管理は、策定したエネルギー管理標準の内容に則って行います。エネルギー使用設備はさまざまな種類があるため、設備ごとにエネルギー管理標準で定めた管理や保守の方法を確認することが大切です。
エネルギー使用状況に関する報告書・計画書の作成
第一種特定事業者・第二種特定事業者の工場では、年度ごとに定期報告書と中長期計画書を所轄省庁に提出することが義務付けられています。定期報告書・中長期計画書を作成することも、エネルギー管理士の業務の1つです。
定期報告書は、事業者が使用したエネルギー使用量やエネルギー使用量の変化などを記録した書類です。エネルギー管理士は毎年度のエネルギー使用状況をまとめ、定期報告書を作成します。
もう1つの中長期計画書は、エネルギー使用合理化の目標を達成するために、3~5年の中長期的な計画を定めた書類です。
提出した中長期計画書は、計画期間中の定期報告書によって評価される関係性にあります。定期報告書の評価が優良(S評価)であれば、中長期計画書の提出頻度の軽減を受けることが可能です。
エネルギー管理士の資格を取得するメリット

エネルギー管理士の資格を取得することには、「注目度が高い環境保全のフィールドで活躍できる」「就職や転職で優遇されやすい」など多くのメリットがあります。
エネルギー管理士の資格を取得するべきか悩んでいる方は、以下で紹介する4つのメリットを参考にしてみるとよいでしょう。
企業における環境保全の最前線で活躍できる
エネルギー管理士が従事するエネルギー使用量の管理は、近年注目を集めている省エネやカーボンニュートラルといった取り組みと深くかかわっています。企業内での環境保全の最前線で活躍できることで、環境保全に関するキャリアを積み重ねられる点がメリットです。
また、エネルギー管理士は設備の維持・管理や報告書・計画書の作成により、企業や従業員の安全性に貢献できます。エネルギー管理を通して企業の経営・経理面のマネジメントにも携われるため、キャリアアップも期待しやすいと言えます。
需要が高く幅広い業界で活躍できる
エネルギー管理士は規模が大きい工場・施設で需要が高く、取得することで製造業などを中心に幅広い業界で活躍できる資格です。特にエネルギー管理者の選任が義務付けられている施設・工場では、事業継続のためにエネルギー管理士の資格保有者が求められています。
また、国全体で2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが進められていることも、エネルギー管理士の需要が高まっている要因です。企業がカーボンニュートラルを実現するにはエネルギー使用量を管理する専門家が必要であり、エネルギー管理士は将来的にも安定した需要があると考えられます。
就職・転職で優遇されやすくなる
エネルギー管理士はエネルギー使用量の管理を担う専門性が高い資格であり、取得することで人材としての価値を高められます。エネルギー使用量の管理が必要な業種では資格保有者の需要が高く、就職・転職で優遇されやすくなるでしょう。
特に優遇されやすいのは鉱業・製造業・電気供給業・ガス供給業・熱供給業の企業です。他業種においてもエネルギー効率の向上を進める企業は多いため、資格取得が採用に有利に働くことが期待できます。
資格手当による収入アップを目指せる
需要が高いエネルギー管理士の資格は、資格手当による収入アップを目指せるメリットもあります。資格手当は一般的に1か月あたり1万~3万円が相場であり、年間では10万~30万円の年収アップにつながります。
エネルギー管理士として長く勤務すれば企業の信頼を獲得し、上位の役職を得られてさらなる収入アップを目指せる可能性もあります。資格手当による収入アップは、長く勤務するためのモチベーション維持の材料としても役立つでしょう。
エネルギー管理士資格の取得方法|受験資格と難易度も

エネルギー管理士資格の取得ルートは、エネルギー管理に関する実務経験の有無によって以下の2つに分けられます。
実務経験の有無 | 取得ルート |
実務経験が3年以上ある場合 | エネルギー管理研修を受講・修了して取得 |
実務経験が3年未満、もしくはない場合 | エネルギー管理士試験に合格して取得 |
エネルギー管理士を取得したい方は、自身の実務経験に合わせて適切な取得ルートを選択しましょう。
また、研修・試験には選択専門区分として熱分野と電気分野があるものの、いずれを選んでもエネルギー管理士の資格を取得できます。
以下では、2つの取得ルートの内容や取得難易度などを解説します。
エネルギー管理士を取得したい方は、自身の実務経験に合わせて適切な取得ルートを選択しましょう。
また、研修・試験には選択専門区分として熱分野と電気分野があるものの、いずれを選んでもエネルギー管理士の資格を取得できます。
(1)エネルギー管理研修ルート
エネルギー管理研修ルートは、合計33時間25分の講義を受講し、修了試験に合格することでエネルギー管理士資格を取得できるルートです。受講するには、3年以上の実務経験の証明書を提出する必要があります。
講義内容は、必須基礎区分とされている「エネルギー総合管理及び法規」と、選択専門区分の「熱分野」「電気分野」です。講義の方式はパソコンなどで視聴するオンライン受講となっていて、講義受講後に指定会場で修了試験が行われる流れとなっています。
エネルギー管理研修の合格率は、2024年度に実施された第47回エネルギー管理研修では約51.7%でした。一定以上の実務経験を積んだ方を対象としていることもあり、国家資格としては取得の難易度が比較的やさしいと言えます。
(出典:ECCJ 省エネルギーセンター「第47回エネルギー管理研修 修了者発表(合格発表)」:/https://www.eccj.or.jp/mgr1/ken/index.html)
(2)エネルギー管理士試験ルート
エネルギー管理士試験ルートは、指定の試験会場で開催されるエネルギー管理士試験を受験し、合格することでエネルギー管理士資格を取得できるルートです。エネルギー管理士試験は受験資格がなく、実務経験の有無にかかわらず誰でも受験できます。
なお、エネルギー管理士試験に合格しても、実際に免状申請を行うには1年以上の実務経験が必要です。合格後に積んだ実務経験も認められているため、実務経験がない方でも先に試験を受験しておくことは可能です。
エネルギー管理士試験はマークシート方式の筆記試験のみで、実技試験はありません。試験科目は必須基礎区分の「エネルギー総合管理及び法規」と、選択専門区分である「熱分野」「電気分野」で構成されています。試験時間は全体で6時間20分です。
エネルギー管理士試験の合格率は、2024年度に実施された第46回エネルギー管理士試験において約36.8%でした。受験資格がないことにより十分な知識を得ずに受験する方もいると考えられ、エネルギー管理研修と比較すると取得難易度がやや高い傾向にあります。
(出典:ECCJ 省エネルギーセンター「令和6年度第46回エネルギー管理士試験 合格者発表」:/https://www.eccj.or.jp/mgr1/test/index.html)
電気工事士の資格取得に興味のある方はこちらのコラムもご一読ください!
エネルギー管理士の仕事に向いている人の特徴

最後に、エネルギー管理士の仕事に向いている人の特徴を3つ紹介します。エネルギー管理士を目指す方は、以下に挙げる特徴を備えることを意識するとよいでしょう。
ただし、これらの特徴がないからと言ってエネルギー管理士に向いていないとは限りません。エネルギー管理に関する仕事を通して、エネルギー管理士に必要な能力や適性が養われるケースもあります。
理工系の知識を有している
エネルギー管理士の業務ではエネルギー使用量の測定や計算を行うため、理工系の知識を有している方が向いています。大学や専門学校で理工系の学部学科を専攻していた方や、機械に関する専門知識がある方は、エネルギー管理士として活躍しやすいでしょう。
また、エネルギー管理研修の修了試験とエネルギー管理士試験の選択専門区分では、熱や電気についての知識を問う内容が出題されます。理工系の知識を有している方であれば基礎知識を備えているため、資格取得に有利です。
マネジメントが得意である
エネルギー管理士にはエネルギー使用設備の維持管理や、企業に対してエネルギー使用の合理化を提案する業務があり、マネジメントが得意な方が向いています。
「エネルギー使用設備の点検をどのようなスケジュールで行うか」「企業が実現可能な合理化の計画を策定できるか」が、マネジメントのポイントです。設備を使用する現場の方や、管理職・経営者といった立場が上の方と話し合いを行い、適切な管理方法や計画を立案する必要があります。
特に「エネルギー管理者」はエネルギー管理の中核的な役割を担う役職であり、エネルギー合理化の達成に向けて率先して動かなければなりません。施設のエネルギー使用量を監視し、必要があれば改善を促す行動力も求められます。
視野が広く常に先を見据えた行動ができる
エネルギー管理士は、業務でエネルギー使用量などの細かな数字を扱ったり、複雑なエネルギー使用設備の管理を行ったりします。視野が広い方はエネルギー使用量や設備の問題に気付くことができ、施設全体のエネルギー合理化に向けた改善を進めやすいでしょう。
また、エネルギーを取り巻く情勢や法制度は時代に合わせて変化しており、企業に求められる役割も多くなっています。エネルギー効率がよい設備の提案や導入を進めるために、エネルギー管理士には先を見据えた行動ができる資質も必要です。
まとめ
エネルギー管理士はエネルギー使用量の管理・改善に関する国家資格です。エネルギー管理者への選任に必要な資格であり、取得することで製造業などの工場や施設で活躍できます。
エネルギー管理士資格の取得を目指す方は、自身の実務経験に合わせて適切な取得ルートを選択しましょう。実務経験がない方も、エネルギー管理士試験ルートを受験可能です。
製造現場での省エネ対策の立案・実行や、設備管理の知識は、エネルギー管理士の業務に直接的に活かせます。また、製造業の現場で得た知識や経験はエネルギー管理士の資格取得後も、より専門的なスキルとして役立ちます。ウイルタスは製造業などの求人を多数扱っているためおすすめです。
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